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2007年3月30日

近頃は、目的地のひとつ手前の駅で電車を降りてしまうことがあります。
たかだか歩いて数十分の距離、そう急ぎでもないときにわざわざあの気持ちの悪い満員電車に乗りたくない、という気持ちが強くなったのです。

普段は通らない道を歩くと、様々なことに気づきます。
今夜は、東北沢から下北沢の話。


東北沢からとぼとぼと夜道を歩いている最中、ふと 世田谷区の家並みは醜い、と感じました。
かつては夢のかたまりであった、その残骸のように強く感じられたからです。

少なくとも近代日本において、自分の家を建てるということは せいぜいが一生に一度の大イベントです。
そのため、家には建てたときの願望が凝縮されやすいものです。
誰だって、高い買いものをするときはできるだけ納得のいくものにしたいですからね。

世田谷区のように密集した地域ならなおさら、それらは限られた土地にさらにデフォルメされて形作られるように思います。
「庭ができるだけほしいな」「植木がいっぱいほしいな」
「なんでもできるガレージがほしいな」「センスの良い形にしたいな」

そして、おそらくもっとも強いであろう願望は、「家族がみんなで楽しく住めるといいな」というものでしょう。
配偶者を得て、子供ができて、人によっては年老いた両親を引き取り、そんな愛すべき人たちを皆受け入れてくれる大きな家を夢見て、ある割合の人々はその夢を実現させていきます。

ですが、夢の実現は必ずしも絶対的な幸福にはつながりません。

家族は不変のものではなく、やがて四散していきます。
子供は成長し、また自分だけの家庭を求めて旅立ち、年老いた両親には、やがて逃げることのできない死が訪れ、ある割合の人々は配偶者の早すぎる死に遭遇し、

そして家には、だれかさんの抜け殻が増えていきます。
そんなのは、実現したかった夢のうちじゃあないのに。

あまりにみんながみんなそうだから、近頃は家並みがみな悲しくみえるような気もします。
何が悪いというわけではなく、何をすれば良いというわけでもないのですが、このやるせない感じ、なんとかならないものなのか、と東北沢の駅を降りる度に思うのです。

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