エラー

2019年10月22日

俺の記憶は幼少から今まで色あせずにずっと連続していると思っていたのだが、ずいぶん虫食い穴ができているとふと気がついた。

記憶力の低下というのは、老化のひとつとしてありふれていてわかりきったことのようだった。
ただ、これはいろいろある脳神経の衰えの中で表に現れていることのひとつに過ぎないよね、というのが、なぜか最近実感としてわかってしまった。
理性とか冷静さとか、俺の中で鮮明だったはずの人間としての良識の解像度も、記憶の確からしさとともに少しずつ下がってぼやけ始めている。
下手の水彩画がにじみくすんでいくみたいな自分にはっきりと気付いてしまった。
俺は老いの本質をわかっていなかった。俺たちの体は死に向けて少しずつ間違っていく、それは体の写像たる魂も追って訂正のきかないエラーにまみれ濁っていくということなのだ。

まいったな、自分は連続していないんだな。
それどころか人の形を保っていないエラーに徐々に置き換わっているというイメージは、これまで考えたこともなくて衝撃的だった。

老いていくことで人の心にある鮮やかな奇跡というべきものがやがて人の形を保てなくなるなら、人と人の愛って何なんだろう。
かつて人の形をしていた残像に抱く、郷愁に似た本質に収束していってしまうんだろうか。

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