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久しぶりに実家に帰った。
物心ついたときには既に当たり前に存在していた実家から見える景色を、俺は小さい頃から没個性だと思っていた。なんでもない景色。郷愁に値すべきものが何も無い景色。
久しぶりに見た景色は、すべてが郷愁に満ちていた。あんなにありふれて見えていたものが、今にも失われそうな貴重なものに見えた。
現実に、これからは失われる一方なのだろう。
人によって作られたものは、どうしたって寿命が短い。いつまでも残り続けるものではない。
いわば俺と同い年の実家の景色が、俺自身が老いるのとシンクロして衰えていく姿に気づき、これらもやがて消え行くのは必然と急に合点がいってしまったのだった。